生命の海
北海道の秋
大海で育った鮭が産卵のために
川を遡上しふるさとへ帰る
鮭は過酷な遡上に耐えうるよう
筋肉に抗酸化物質のアスタキサンチンを溜め込むらしい
(それが鮭の身の赤い所以で、産卵直前には皮膚と卵に移行するというから更に感動的)
こうして誰に言われるでもなく
鮭は本能でふるさとを目指してゆく
激流に打たれ
傷だらけになりながら
途中で力尽きたり
捕食されてしまったりで
その回帰率はほんの数%
こうした厳しさによって
強いものが次に生命をつなぎ
種が洗練されているのかもしれない
それは勝ち負けの世界なのか?
私はそうではない世界を信じたい
上流にたどりついた鮭は
きっとどんな仲間の生命ともつながり託されていて
その産卵は種全体の喜びなんだと思う
なんだかヒトの生命の営みとも重なる
ご縁の海の中で人と人とが出逢うこと
生命の誕生、その奇跡は全体の喜び
私の子だからとか誰の子だからとか
本来そんなエゴのようなものは超えちゃっている
ここに生命があるだけで全体の喜び
価値のない生命なんてあるものか
もちろんエゴがあるから
出逢える愛しく美しい経験もあって
どちらの層も一緒に感じられたら最高に幸せ
そこにあるものを何層にも渡って味わう
人間だからこその醍醐味
どんな人も見えないご縁の糸で宇宙全体と繋がっている
その糸を通じて今ここに生命のエネルギーが流れ込んでいる
受け取ることを拒まずに
ありがとうと心を開けば満ちてくる
アルトリ岬より望む海
昼と夜とが混じり合う
束の間の優しい時間